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インプラントでも大丈夫?

自律神経の本質がある。 病の本質が、自律神経のアンバランスにあるというのはすでに解説した「 HLA理論」の原点なのだが、その前提にあるのは、自律神経を構成している交感神経とここに、一本の振り子が立っている。

振り子の先端は、左右に同じ幅だけただ揺れ続ける。 強い風が吹けば、その分だけふり幅は大きくなる。
だが、それも徐々に収まるだろう。 常に一定の幅に振れ続けることによって、振り子は振り子であることができるのだ。
いったい何の話をしているのかと言えば、この振り子は「あなた」なのだ。 正確に言うと、振り子があなた自身であり、振り子の振幅は「あなたの自律神経の振幅」なのである。
バランスが何よりも大切副交感神経が常に一定の幅で動いていることである。 交感神経と副交感神経のバランスは、白血球の中にあるリンパ球と穎粒球の割合で測定でき、健康な人のリンパ球は、およそ三十五から四十一%の問で、穎粒球は五十四から六十%の間で安定している。
それ以下だと白血球中の相方である穎粒球が増えすぎて交感神経過多に陥り、全身の血流障害から血管障害や粘膜組織の損傷がはじまってしまう。 逆に、リンパ球がそれ以上に増えても、血流が悪くなり、アレルギー疾患や全身の倦怠感、ひどくなれば私のようなうつ病を発症する可能性があるのである。
日常生活の中で起こる「頭が痛い」とか「下痢をした」などの症状も、自律神経が交感神経寄り、あるいは副交感神経寄りに傾いている場合の反応と考えてもらえばわかりやすいかもしれない。 これは振り子で言えば、左右に等しく振れるはずのバランスがやや崩れ、左か右のどちらかに少々傾いてしまったときに起こる症状だ。
こうしたバランスがもっとひどく崩れていくと、それにしたがって症状も重くなる。 はじめは軽い皮層炎だったのが、重度のアトピーになって皮層が赤くむけてしまうとか、手足の冷え程度の血流障害がいつしか脳梗塞につながるなどがわかりやすい例と言える。
つまり、バランスの崩れる度合い、あるいは振り子の傾き方によって症状の深刻さも変化するわけだ。 自分自身がうつ病から回復する過程を冷静に振り返ると、同じような「自律神経の振幅」が見事に現れていた。
そもそもうつ病という、振り子が副交感神経側に大きく傾く病に躍ったのは、その前に逆側の交感神経を酷使する状態にあったためではないかと私は推測している。 激しいストレスから、脳梗塞や狭心症という交感神経が過剰になって起こる病に倒れながらも、はやる心を抑えることができず、ろくに休息をとることもなく仕事に復帰してしまった。
その反動で、今度はドーンと副交感神経に傾く病に陥ったのである。 私のように、過剰な副交感神経優位のうつに陥ると、ちょっとやそっとのことで自律神経の振り子は元に戻ってはくれない。

一歩進んで二歩下がるがごとく、行き過ぎた副交感神経からちょこつと交感神経側に振れ、また副交感神経側に傾くわけだ。 それをいつ果てるともなく、延々と繰り返しながら亀の歩みのように少しずつ少しずつ、いるかどうかだっておぼつかないではないか。
とはいえ、自律神経の反応の一つであったとも言えるうつ病は、つらい苦しい体験だった。 「もう俺はだめだ、何をやってもよくならない……」激しい不安感から、幾度としれずに訪れた絶望感。
S先生の治療や半身浴などで体が温まるとわずかな希望が見えてくるのだが、それ以外の時間は悶々と過ごしていた。 絶望感の谷間のなかで、ごくたまに希望の丘に登ることができるのがかえって切ない。
しかし、その状態もまた、自らの自律神経の反応によって生み出されていたのである。 自律神経のバランスを整えていく。
そして、苦しくて苦しくてついに「もうこの苦しさはどうにもならない!」と観念したときつまり意思の力でコントロールすることをあきらめ、神の意のままにと感じたとき、私の自律神経のバランスは快方の方向へ転じたのである。 自律神経とは、なんと精妙でなんと容赦のないものなのか。
この経験を通じて、人間の体には、すごい力が宿っていることを思い知らされた。 肉体的・精神的にギリギリの状況に追い込まれると、自然と光の射す方向へ向かおうとする。
それも、本質的な場所に立ち返って問題の箇所を浮き彫りにしながら。 いや、本質に立ち返るからこそ、本来のパワーが発揮されると言うべきか。
私の場合などは「死にたくなければ休め!」とばかりにうつ病に確り、寄せては返す副交感神経と交感神経の波間にもまれながら、乱れに乱れた自律神経が調整されていった。 しかも、それまでは理論上のこととして把握していた自律神経の世界を、患者さんの立場から痛いほど味わうこともできた。
なんとか生きながらえた今だからこそ、断言できる。 HLA 理論を発見し、その理論に基づいた治療を行ううえで、自分の経験は得がたいものだった。

この経験なくして、現在のレベルで治療を行うことなど到底できなかった。 しかも、それもこれも私が自分の意思で選んでそうなったことではなく、自律神経という、意思とは無関係に働きながら全身の血管や内臓のバランスをとっている神経によって、必要な場所に導かれたのである。
体は、自律神経は、その人にとって本当に必要なことはすべて知っている。 あとは、その人が自律神経の発する声に耳を傾けるかどうかにかかっているのだ。
湿疹、風邪などの症状こそが、体の声。 絶対に無理におさえつけてはならない。
症状は大事なサイン。 自律神経免疫療法を実際に受けられる患者さんは、必ずといってよいほど何かの形でリバウンドがあらわれる。
ある人は湿疹だったり、別の人は下痢だったり、発熱だったりと形はさまざまだ。 なぜ人によって現れ方が違うのかといえば、それは人によって弱い場所が違い、各々の体によってバランスのとり方が異なるためである。
しかし、治療を受けたあと「三十八度も熱が出た」とか「鼻水が止まらない」と言って、わざわざ解熱剤を飲んだり、鼻水を抑制するアレルギー剤の類を飲んでしまうのはもったいないことだと思う。 せっかく体の中で眠っていた機能が目を覚まし、あるべきバランスをとるために動き出しているのに、その途端に体の勢いを止めてしまったら元も子もないではないか。
発熱や湿疹、便秘や下痢など、体の外に出てくる症状は、体をよくしようとする免疫の反応である。 病気だと思わないでほしいのだ。

だから、いわゆる伝染病だとか外傷だとか、現代医学の粋が要求される脳血管や心臓血管のトラブルではない限り、やみくもに薬で抑えてしまうのはナンセンスである。 体に宿る免疫力が、体のよくない箇所や不具合を改善するために、セキや鼻水から皮層症状、下痢、発熱などをサインとして出してくれているのだから、そのサインを素直に受け止めて、出すべきものは出す、という姿勢で臨めば体はおのずとよくなって動物本来がもつ「自分で自分を治す力」には、驚くべきものがある。
もちろん、人間も動物であり、本能レベルで乱れたバランスを元に戻す力を知っているのである。 人間は本来、体も心もあるべきバランスが整えられた地点ではじめて、その人らしさ、長所を引き出すことができる生き物だ。

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